
WEB父母懇親会への挑戦と成功の秘訣。来年度はハイブリッド型も
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、大学を取り巻く環境が劇的に変化し、大学と学生の父母を結びつける「父母懇談会」の役割はますます重要になっています。
withコロナ時代の父母懇談会について下記の記事で詳しく取り扱っていますので、興味のある方はぜひご覧ください。
そんな中で、2020年度に父母懇談会をオンラインで開催した、東洋大学 社会連携推進室の椿様に詳しくお話を伺いました。
プロフィール
東洋大学 社会連携推進室 卒業生・甫水会連携推進課長 椿雅人 様
1993年4月学校法人東洋大学に入職。就職部、入試部、教務部等の部門を経て、2020年4月より現職。
2020年度の父母懇談会を中止や延期ではなく、オンラインでの開催に踏み切った理由をお聞かせください。
従来はご父母と大学が対面で直接お話しさせていただくことで、皆さまの知りたい情報を、説得力を持ってご説明するように努めてきました。
コロナ禍という対面での接触が難しい状況の中でも、スマートフォンという皆さまにとって最も身近なデバイスを活用することで、これまで以上に多くの情報を、より分かりやすくご提供できると考え、オンラインで開催することを決めた次第です。
具体的には、2020年7月31日から8月16日まで特設サイトを公開(閲覧は8月30日まで)、さらに8月8日から16日までを個別質問の受付期間、8月31日から9月7日までを個別質問に対する回答期間として設定しました。
WEB父母懇談会の開催にあたり、特設サイトを開設されました。
特設サイトや掲載コンテンツを制作する上で、工夫されたことは何でしょうか?
最も工夫したのはコンテンツの見せ方です。
オンラインでの開催に関しては、従来よりも多くの情報を配信できるというメリットがある反面、知りたい情報になかなかアクセスできないというデメリットが生まれる可能性もあります。
ご父母の皆さまを困惑させることのないよう、皆さまの知りたい情報をきめ細かに把握するとともに、スマートフォンでの見やすさを意識して特設ページの制作を進めました。
具体的には、コロナ禍への対応に関する情報が、ご父母の皆さまにとって最も関心のあるテーマだということで、各セクション(学内部門)の対応を特設サイトの中でも目立つ位置に配置しました。
また、頻繁にお問い合わせいただくご質問とそれに対する回答を事前に各セクションから集約し、特設サイトに掲載するなど、欲しい情報にスムーズにアクセスできるようなサイト設計を心掛けました。
「サイトの見方がわからない」といったご意見は皆無でしたし、特設サイトの見やすさという点に関しては、学長からも高評価をいただくことができました。
コンテンツの見せ方以外ではいかがでしょうか。
特設サイトへのログインにパスワードを設定したことです。これにより、就職活動の実績など、一般には公開していないデータや、本来は対面でなければお伝えできないような密度の濃い情報も、特設サイトに掲載することができました。
パスワードの活用に関しては、2021年度も続ける方針です。
オンラインでの開催ということで、ご父母の皆さまから寄せられる個別質問に対し、どのように対応されたのでしょうか?
Web上に質問箱を設置するとともに、いただいたご質問に関しては、担当セクションごとに分類し、各セクションからメールで回答させていただきました。
質問の受付期間と回答期間を分けたことで、各セクションは比較的余裕をもってご質問に対応できたので、「回答が遅い」といったご意見はありませんでした。
今年度の父母懇談会では、個別質問への対応からもう一歩進み、個別面談にもチャレンジしていきたいと考えています。
オンライン開催のメリットはどこにあると考えていらっしゃいますか?
オンラインの最大のメリットは、物理的・時間的な制限を大幅に解消できる点にあります。
つまり、特設サイトの開設により、ご父母の皆さまは好きなときに、お好きなコンテンツを視聴することができる。
こうした自由度の高さは、対面による開催では得られないメリットだと思います。
実際、父母懇談会への参加者は、2019年度の約2,600名(キャンパス1,817名、地方26会場821名)に対して、2020年度の特設サイト訪問者数は5,115名とほぼ倍増しました。
一方で、コロナ禍への対応など、よくあるQ&Aを特設サイトに掲載していたこともあり、ご父母の皆さまからのご質問やお問い合わせの件数は、2019年の817件から20年度は26件と大幅に減少しました。
逆に、反省点や課題を挙げるとすれば何でしょうか?
また、その改善のポイントについてはどのように考えていらっしゃいますか?
一番の反省点は、個別面談を行う方法が確立できなかったことです。成績や学生生活など、個別でなければなかなか相談できないお悩み事に、オンライン上でいかに対応していくか。これは次年度にチャレンジすべき課題です。
また、特設サイトを中長期的に運用し、開設期間中の状況変化に合わせて掲載する情報やコンテンツを柔軟に変更する仕組みの構築や、動画コンテンツの長さを短くしたり、学年に合わせて提供する情報やコンテンツを変えたりするための仕組みの導入は、今後改善すべきポイントです。
来年度の個別面談における実施計画について、もう少し詳しく聞かせてください。
学生生活や成績関係で個別面談を希望される方には、特設サイト上から希望時間帯をご登録いただき、ご父母と教務課の職員に学生を加えた三者面談、さらに教員を加えた四者面談をオンライン会議アプリ上で実施したいと考えています。
タイムスケジュールの組み方や、個別面談中に第三者が入ってこられない仕組みの構築を含め、具体的な実施方法については検討中です。
個別相談の具体的な内容についても、留意すべき点があります。関東圏にお住いの方と、それ以外の地方にお住いの方とでは、関心を寄せるポイントに違いがあるということです。
関東圏にお住いのご父母の皆さまからは学業成績に関するご相談をお寄せいただくことが多いのに対し、関東圏以外の地方にお住いのご父母の皆さまからのご相談で最も多いのは、「子どもが東京で、きちんとした学生生活を送っているのか。子どもに聞いても教えてくれないから、大学側から教えてほしい」というものです。
対面での個別面談と同様に、オンラインでもご父母の皆さまの不安を払拭し、安心感を持っていただけるような工夫が大切だと考えています。こうした取り組みが、ゆくゆくは大学に対する信頼の醸成につながっていくはずです。
オンライン父母懇談会の開催に向けた準備には、どのくらいの時間がかかりましたか?
例年のような対面形式の父母懇談会の場合は1ヶ月もあれば準備できるのですが、今回のオンライン父母懇談会は、より多くの情報量が求められることから2ヶ月くらいかけて準備を行いました。
コロナ禍の中での急な方向転換にもかかわらず、比較的短い期間で対応できたのは、各セクションが年度初のガイダンスをWEB上で行う準備を進めていたため、そのための動画を集約し、活用できたからです。
ただ、可能であれば3ヶ月は欲しいというのが正直なところですね。
笑屋に依頼してみて、よかったと思う点について聞かせてください
私ども大学側から「こうしたい!」という相談をさせていただくと、「このように対応すると良いのではないでしょうか」といった提案を即座にもらえたことですね。
父母懇談会のオンライン化に向けた課題を全てスムーズにクリアできたことには、本当に感謝しています。
最後になりますが、2021年度の父母懇談会についての構想がありましたら、差し支えない範囲でお伺いできますでしょうか。
2020年度の取り組みを通して、できること、できないことがだんだん見えてきました。2021年度もコロナ禍が続くことが予想されますが、対面・非対面を組み合わせた“ハイブリッド型”の父母懇談会の在り方や、個別面談の具体的な方法について、目下、検討を進めています。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて変化したものを積極的に活かすとともに、他大学の取り組みも参考にしながら、父母懇談会をより良いものにしていきたいと思っています。